【ホワイトデー企画/幻水シナクラ】







その日彼は上機嫌だった




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ホワイトデー

バレンタインデーの頑張りが報われる今日
シーナは、起きた瞬間から
テンションが最大級に高まっている状態だった


何せ、一ヶ月待ちに待ったこの日がやって来たのである



クライブは何をお返しにくれるだろうか?


お菓子?
(いやいや、そんな月並みなモノはくれそうじゃないよな)

じゃあ小物とか・・・
(うっわvv指輪とか貰っちゃったらどうしよーーー!!)

デートもいいな
(一緒にどこか泊まりがけとかーーーvvvv)


何日も前から、そんなことばかりを考えていたシーナ
ましてや当日となれば
その考えは止まらない勢いで

とりあえずは、バレンタインデーと同じく
今日のことを知らないであろうクライブに説明を施すために
シーナは、いそいそと着替えを済ますと
速攻でクライブの部屋へと向かったのであった


自室を出て
少しずつ早くなっていく足取り
ふんふんと鼻息混じりの、そんなシーナの目に飛び込んできたのは


丁度、自室から出てきたクライブの姿

そして
何と手には

普段のクライブだったら絶対に所持しないであろう
小さな、真っ赤な紙袋


(うわーーーvv感激っっ!!クライブ今日のこと知ってたんだ!!!)


思い描いていた光景が、ついに現実のものとなった嬉しさから

「クライブーーーーーーーーー!!!!」

そう叫びながら
シーナは、もの凄い勢いでクライブの元へ走り寄っていき
押し倒してしまいそうな勢いで、クライブを思いっきり抱きしめた


「なっっ・・・一体どうしたんだ・・・シーナ。」

いきなりの派手な抱擁に動揺しつつも
何とかそう訊ねるクライブ
しかし

「嬉しーーーー!!すっげ嬉しいよーーーーオレvv」

シーナは、腰に回した手を緩めることなく
さらにクライブを自分の方へと引き寄せていく
その朝っぱらからの派手なラブシーンは
どこからともなく、ひやかしの口笛が聞こえてくるほどで

「オイっっっ!!ちょ・・シーナ!!いい加減離れろっっ!!」

真っ赤になりながら、シーナを引き剥がそうとするクライブ
しかし、シーナの腕は、しっかりとクライブの腰に絡んだまま


「もーーいいっていいってvvそんなに照れなくてもさぁーーーvv」

脳天気な返事だけが、首筋に埋められたシーナの口から
聞こえてくる

「はぁ!?」

「ちゃんと知ってたんだじゃなーーいvv今日のコトvv」

そう言いながら、やっとでクライブから剥がれると
シーナは
はいっっvv
という感じに、両手をクライブの前に差し出した


「・・・・・・何だ?」

ニコニコ顔のシーナを不思議そうに見つめるクライブ

「え?だってそれホワイトデーの・・・。」

「・・・そうだが・・・それが何だ?」

「え・・・・・・・・・・・・・。」

何が何だか分からない様子で固まっているシーナ
そして次の瞬間、シーナの耳に信じられない言葉が聞こえてきた

「まさか・・・お前にやるわけは無いだろうが・・・・。」

愛しのクライブ

この頃は、オレにも気を許してくれる時も多くて
バレンタインデーも何だかんだ言って幸せに過ごしたんだし
(しかし、あの後ぶんどって食べたケーキは不味かったなぁ・・・)
それなのに
それなのにっっっ!!!
そのあんまりな言葉は何・・・


聞き間違えではないかと、思わずクライブの顔を見つめるシーナであったが

クライブは、そんなシーナの様子を
逆に不思議そうに見つめるばかりで

『それじゃあ、その手に持ってるのは何なんだよっっっ!?』

シーナがそう訊ねようとしたとき


先ほどの言葉以上に信じられないコトが起こった


「あ!おいっっ!!」

丁度、2人のすぐ横を通り過ぎようとしていたフリックとビクトール
普段、なるべく避けているほどの2人を、クライブは呼び止めると

「これ・・・・・・。」

そう言って
手に持っていた紙袋
ついさっきまで、シーナが自分が貰えると思っていたソレを

あろう事か
2人に差し出したのであった

「ああああああーーーーー!!!!」

思わず叫ぶシーナ

「??どうした?シーナ???」

不思議そうなクライブを前に
シーナは今にも泣きたくなるような気持ちであった

よりにもよって
何でこの2人に!!

「・・・どうしたんだ?クライブ??」

「何だーー!?槍でも降るんじゃねえのか!?」


思いも寄らないプレゼントに
動揺しつつも、喜びを隠せないフリックとビクトール

「まあ・・・その・・俺の気持ちだ。」

そんな一言で
シーナの目の前を真っ暗に
そして
フリックとビクトールの目の前をバラ色に変えて

「シーナ。食堂に行かないのなら先に行くぞ。」


あっさりとそう言いながら
クライブはその場から去っていった



残されたのは
既に灰と化してしまいそうなシーナと
突然の幸せに、にやけきった2人





結局
その後、シーナは食堂へ行くことは出来ず
落ち込んだときの定番コースである中庭にて
1人テーブルに突っ伏していた



行って
クライブと何を話せばいいのか?


聞きたいことは山ほどある


何で自分には何もくれなかったのか
とか
それなのに、何であの2人にはプレゼントをあげたのか
とか
それ以前に、2人にバレンタインのプレゼントを貰っていたのか
とか

だけど、ここまで凹みきった状態では
それすら聞く勇気が出てこない

今まで、オレがクライブに向けてきた思いは
ちっとも伝わっていなかったのか

シーナがそう思いながら
既に数え切れない何度目かのタメイキをついたとき

「ここ・・いいかしら?」

カタン

と小さな音と共にその声は降ってきた
ゆっくりと、項垂れていた顔を上げると
そこには、にっこりと微笑む
リィナの姿


「あ・・・うん。いいけど・・・・。」

シーナの返事に、リィナは小さく微笑みを返した後
隣の席に腰を下ろした


少しの沈黙



普段、接することの少ない、リィナ
近くで見ると、その美しさは目を見張るほどで
クライブ一筋といえども、元は女好きなシーナ
いつもだったら、ニコニコと会話に花を咲かせていたところであろう
そう
いつもならば



「あの・・今オレちょっと落ち込んでて・・・・あんまり話し相手にはなれないんだけど・・・・。」

極力、リィナを傷つけないように
やんわりとした言葉で説明するシーナに


「そのことなんだけど・・・・。」

そう言って、リィナはにっこりと微笑んだ


「多分、クライブさん誤解してると思うのよ。」

「え・・・・?」

「私、昨日クライブさんがある人に今日のコトを聞いているのを見たんだけれど・・。」

「クライブがっっっ!?」

「そう。」

「誰に聞いてたの!?」

「それが・・・・・・・・。」




リィナの言葉を聞いた次の瞬間
シーナは中庭から飛び出し、廊下をダカダカと駆け抜けていた
半分、飛び降りるような勢いで階段を下りて向かった先は




モチロン



諸悪の根元である彼の元





ダンダンダンダンダンダン


乱暴に鳴り響くノックの音に
ゆっくりとその扉は開いた




「カミューーーーーーーー!!!!」



息を切らしながら叫ぶシーナの目の前には
余裕でにっこりと微笑むカミューの姿



「アンタっっ!!クライブに何教えたんだよっっっ!?」

「どうしたんですか?一体。」

怒鳴り込んできたシーナを前にしても
カミューの態度は全く変わることなく
それが、さらにシーナの苛立ちに火をつける


「しらばっくれたってダメなんだからなっっっ!!!」

「だから何がです?」

「だから!!今日のコト・・・・・。」

「ああ。」

そこでピンと来たのか
カミューは目を輝かせて

「あれ?もしかしてクライブが誰かに何かあげてたんですか??」

興味深そうに訊ねてくる


「そんなの・・関係ないだろっ!!それより何教えたんだよっっ!!」

今にも掴みかかりそうな勢いで叫ぶシーナと
それに対して余裕の眼差しのカミュー


「それは・・・何なら本人に聞いてみたらいかがですか?」

そう言って、カミューはシーナの後ろへと視線を送った
その動きに振り返ったシーナの目の前には

怪訝そうな顔のクライブ
あまりの剣幕の所為で、シーナはすぐ後ろにクライブが来ていたことに
全く気がついていなかったのだ


あ、クライブ!!昨日のことなんだけど!!



そんなことを言おうとしたシーナの目に
飛び込んで来たのは


ああ神様
頼むからそれだけは勘弁してよ

そうシーナが思わず祈ってしまったほどサイアクなモノ


真っ赤な紙袋
しかもさっきよりもっと大きい



「何を怒鳴ってるんだ?シーナ。」

「ク・・ライブ・・・それもしかして・・・。」

おそるおそるシーナが、モンダイの紙袋を指しながらそう訊ねる


言いたくない

聞きたくない

でも知りたい



「カミューにあげるんじゃ・・ない・・よね?」

震える声で聞いたシーナに





「あ?そうだが。それがどうかしたのか?」

何ともあっさりとそう言うと
クライブはカミューにその袋を渡した

「どうもvv」

それを笑顔で受け取るカミュー


再び繰り返される、悪夢のような光景
それなのに

「・・・・・・・・何だか顔色が悪いぞ?どうしたんだ?」

愛しのクライブからの
その、ぜんっぜん分かってくれてない返事に

とうとうシーナが



キレた





「何でーーーーーーーーーーーー!!!!」

掴みかかるようにクライブに貼り付くと

「何でオレにはくれないの!?何でっ!?そんなにオレのこと嫌いっっっ!?」

ぽかんとしているクライブに向かって
一気にまくし立てる

ブンブンとシーナに揺さぶられながら
クライブは突然のこの事態に、頭の中が真っ白になってしまっていた

「ちょっっっ・・・何を・・・・・。」

「ケーキが不味かったから?それともやっぱり俺が嫌なの!?」

「は?だから何を言って・・・・・・・・・。」

「ねえ!何でカミューにあげたりするわけっっっ!!??」

「何でって・・・・だって今日は・・・・。」



「 『気持ちを断る日』 ですものね。クライブ?」



半泣きのシーナと
それに焦るクライブ




目の前の光景に思わずくすくす笑いながら
やっとでカミューがそう告げた




その言葉の意味が、すぐに理解できなかったシーナは
呆然とした様子でクライブの顔を見つめる


クライブは、カミューの言葉に
こくこくと頭をたてに振っていた

「何の日・・・だってぇ〜〜〜?」

「だから・・今日はその・・思いを受け入れられない相手に対して贈り物をする日なんだろう?」

聞かれたこっちが泣きたくなるような真顔で
クライブはそう答えた

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

その答えに
すっかりハニワ顔のシーナ


「・・・・・・・おい・・・もしかして違うのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「おい!!シーナ!?」

「・・・・・・・・・違うよクライブ。100%違う・・・・・・・。」


「え・・じゃあ今日は一体何の日なんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


思わず、答えに詰まっているシーナに変わって


「いやー、うっかり間違えてましたねー私。
今日は 『バレンタインのお返しをする日』 でしたっけ???」

カミューが満面の笑みを浮かべて
そうクライブに答えた


一瞬固まるクライブ


朝からの自分の行動を思い出したのか

見る見るうちにその顔が真っ赤に染まった

「なっっ・・・・・・・・・・・・・・・。」

クライブの騙されっぷりに呆れているシーナと
あんまりな展開に戸惑っているクライブをよそに
カミューは


「じゃあ、後はお二人で。あ、コレ大事にしますねvvクライブvv」

そう言って
バタン
と自室の扉を閉めてしまった



「貴様!!!出てこいっっっっ!!!」
「何てこと教えるんだよーーーーーっっっっ!!!」


我に返った2人が、慌ててドアを叩くも既に遅く

その扉は再び開くことは無かった






そしてその後
クライブの部屋にて





「もーーー絶対信じられないっっっ!!!」

「しかしあれはカミューが・・・・・。」

「だから!!何でそこでカミューに聞きに行くんだよーーー!!」

「・・・・・・・・お前に聞いたらまた騙されそうだしな・・。」

「あ・・・・・あれはその・・・・・。」

「バレンタインが「結婚」なら次は何を言われるか分からん。」

「だからーーー。あの時はすぐに教えただろーーー。」

「散々好き勝手やってからな。」

「うーーーー。だからってカミューなんかに聞くから・・・・。」

「・・・・・・・・。」

「ビクトール達、絶対誤解してるって・・・。」

「・・・・・・・・。」

「結局カミューにもプレゼントあげちゃったし。」

「・・・・・・・・・。」

「結局・・・・・・・・・オレは何も貰えなかったしなぁ・・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」

「何か欲しいなぁーーーーーー!!!!!!」

「し・・しょうがないだろう!もう店は開いてないんだし・・・・・。」





そんな会話を、何度も何度も繰り返しながら
2人の14日は過ぎていき






結局

クライブは後日、シーナとのデートにつき合うことになり

その上
例の2人からはさらに追い回されるという

何とも不遇な日々を送ったのであった








来年こそは
クライブの幸せを
切に願う











多分












奈月様のサイトでホワイトデー企画ということで配布していたSSを
ガンモドキかっぱらってきました!!(言い方嫌スギ)
だってもうバレンタインの時は期間が過ぎていて頂く事が出来なかったんで
今回は忘れずにと!!奈月さんの書かれるシーナの甘えっぷりがもう
大好きです!クライブの天然さも大好きです!ステキです!!(告白?)
あぁもう自分もこの位文才が欲しいですー!!甘々ばんざーい!!
そして幻水SS書いてみたいっす〜(止めとけ)
奈月さん素敵SSを本当にありがとうございますです(悦)


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